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活版印刷は凸版印刷(レタープレスとも呼ばれる)の一種で、活字を組み合わせた版を作成してインキを塗布し、用紙に押し付けて印刷する方法です。その歴史は古く発祥には諸説ありますが、11世紀に東洋で生まれたというのが一般的で、活字による印刷物も現存しています。しかし、19世紀末までは東洋では活版印刷はあまり広く定着しませんでした。26文字のアルファベット主体の西洋と違い、漢字文化圏では膨大な数の活字が必要だったため、というのがその理由とされています。一方、西洋ではドイツのヨハネス・グーテンベルクが14世紀に発明したとされ、それまで主流だった写本や木版よりも高い生産性があったため、ヨーロッパ各地、さらに世界中に広まっていきました。
現在ではオフセット印刷などにその首座を明け渡しましたが、版を紙に押し当てることでできる独特の凹み、やさしくなじむインキの風合い、インキをつけずに凸版を押す空押しなど、活版印刷ならではの魅力は健在です。今はスピードや効率が優先される時代ですが、その一方で活版印刷のような古き良き技術や、人の手・ぬくもりを感じるモノの価値を見つめなおす人たちも増えており、活版印刷は再び注目を集めています。名刺・ショップカード・招待状など、高いデザイン性が求められる分野では特に需要が高く、デザイナー・クリエイターの間では活版印刷は表現手段のひとつとして定着しつつあります。
特に名刺やショップカードの印刷においては、活版がもたらす効果は絶大です。名刺は人となりを表現するものですから、こだわりの強い作り込まれたデザインで作成されることが珍しくありません。よりハイレベルの名刺デザインを心がけていくと、見た目のデザインだけでなく、用紙やインキ、そして触覚にもこだわって作成されることもあります。活版印刷はそれらの表現に長けているので、名刺やショップカードの印刷には非常に適しています。
活版印刷を求めるデザイナー・クリエイターの皆様のお役にたちたい、活版印刷の魅力にもっとスポットライトを当てたい。そんな想いから、黒林堂は生まれました。創業者と共に長く印刷所を支えてくれた職人たちと、心のこもった「物づくり」の原点をしっかりと見つめ、創業から約60年を数える弊社が培ってきた技術を提供しています。
これまでに多くのお客様から名刺やショップカードのご注文いただき、様々な紙、インキ、デザイン、加工のものを印刷してきました。また、イベントへの出店や情報誌にご紹介いただいたり、活版印刷の魅力を広く周知していただけるよう、微力ながら情報発信にも努めています。こだわりのあるお客様に、こだわりのある商品を届けるために。活版印刷の魅力をより多くの人に感じていただけるように。今まで培ってきた技術をもって、日々成長の見える商品を生み出していきます。
鮮明で美しい印刷に仕上げるのが職人の腕の見せどころ。活版印刷は、表面に凹凸のある版の凸部分にインキを乗せて紙に転写する凸版印刷という方式のため、印刷した画線や点のふちに、にじみのようなフチドリ(マージナルゾーン)が生じてしまいます。このマージナルゾーンを最小限に抑え、細やかな文字や複雑なデザインのご注文も、できるだけ元のデザインを損なうことなく、美しく仕上げることを追求しています。昨今流行のインプレッション(印圧)の強い印刷と、文字などを綺麗に印刷することは相反します。その反比例する両者を最大限反映できるように、よりよい商品を生み出せるように、私たちは常に努力しています。
黒林堂で主に使用するのは、ドイツのハイデルベルグ社製活版印刷機「プラテン」。ハイデルベルグ社は1850年創業の老舗印刷機メーカーで、印刷機メーカーとしてのハイデルベルグの名を世に知らしめたのが、このプラテンです。小さなサイズの印刷物を大量生産できる初めての印刷機として、一躍脚光を浴びました。現在では生産されていない機種ですが、黒林堂では名刺・ショップカードをはじめ、様々な活版印刷で使用している現役機です。
黒林堂では、インキや用紙も厳選しています。インキはDIC、PANTONE(R)に加えて、三星インキ株式会社のご協力により活版特性の高い『cappan studio オリジナルインキ』をご用意しています。用紙は様々な洋紙・和紙を検討し、活版印刷特性が良いものや、テクスチャーにこだわったものを多数揃えています。
それらの中でも特に個性的なのは、日本有数の和紙産地・福井県越前市の人間国宝和紙職人、岩野市兵衛氏の手漉き和紙を使用した名刺です。丁寧な手作業で作られる紙は高い芸術性をもった美しさがあり、二百回から三百回もの摺りに耐える比類無い強靱さから、国内外の著名な版画作家に愛用されています。黒林堂では、この素晴らしい紙を使用したオリジナルの活版印刷名刺・カードのご注文を承っています。他とはひと味もふた味も違う気品ある紙の味わい、ぜひ一度ご検討ください。
4角に直角が出ていない耳付和紙ですので、一般的な名刺とは違って、見当の厳しいデザインの対応は位置あわせが簡単ではありません。そのため、弊社では基本耳付和紙は片面1色印刷のみを承っています。見当あわせ(位置)がなく、見当ズレが生じても問題のない活版印刷での2色印刷や、活版印刷1色+エンボス加工なども可能な限り承りますので、ご相談ください。
人間国宝和紙についてを併せてご覧ください。
黒林堂の活版印刷名刺は、当サイトからインターネット注文できます。小ロット(50部)でも印刷可能で、印圧の指定や小口染め、色校正等のオプションサービスもありますので、お気軽にご利用・ご相談ください。
ご注文から納品までの流れや、入稿データの注意点などは、『ご利用ガイド』をご覧ください。また、オーダー実績の一部を『活版印刷作品紹介』でご紹介していますので、併せてご覧ください。