目で見て感じ取れるその高貴なたたずまい、触れたときの得も言われぬ感触。紙という身近なものが、こんなにも違うものなのか…
人間国宝の手漉き和紙と対面したとき、そんな純粋な想いが湧き上がります。日本が誇る最高級の和紙で作られた名刺からは、渡す方も受け取る方も、静かな感動を分かち合えるに違いありません。
日本有数の和紙産地・福井県越前市。ここで作られる「越前和紙」は和紙のトップブランドとしても名高く、その代表的な和紙職人の1人が岩野市兵衛さんです。
原材料となる楮(こうぞ)の塵取りも薬品に頼らず、すべて手作業、気の遠くなるような地道な行程をコツコツと繰り返すこと60年以上。木版画や絵画など、用途にあわせて絶妙な紙厚に仕上げる緻密な技術は、この積年の経験によるものなのです。
1933年9月28日生まれ。16歳で家業の手漉き和紙の道に入り、父である八代目岩野市兵衛氏の下で、楮(こうぞ)だけでつくる生漉奉書の技法を習得。1978年に九代目岩野市兵衛を襲名。
彼が漉きあげる奉書は、高い芸術性と、二百回から三百回もの摺りに耐える比類無い強靱さから、国内外の著名な版画作家に愛用されている。